桜が咲く頃に(私たちは家にいた)

ホワイトデーなら世の中が知らせてくれるから忘れなくない？という彼女の提案で僕らは予定よりも少し早く結婚した。数日前までのポカポカ陽気は嘘のような寒い夜に電車に乗って区役所に行った。(てっきり近所の市役所で済ませれると思い込んでいたのでした、知らない街、東陽町、駅から牛丼の匂いがして吉野家の存在を当てる方が出来た、そんなことでゲラゲラし合えるのが良かった)とても親切な役所の人に無事届けを出して、すんなりと籍を入れた。帰りに鳥貴族でどかどか食べた。彼女は初めてであった。山芋焼きを家でもやりたい。チャンジャの量が多い、良い鳥貴族であった。

良いパンの匂いがする〜とお店に引き寄せられても「まだ知らない味だから恋しくなることはない」と言い、不要な買い物はしない、銀のエンゼルと一緒にベルマークを集めている(しかし使い方は知らない)、マクドナルドを許さないなど節約健康家である彼女が使うワードの中でも"ぴかぴかきれい"が随分好きだ。特に変わった意味はないのだが、語感とそれを発する姿が良いのだ。大抵は前歯をキレイに磨いたときに言う。

外出自粛の土曜日。少しだけ遠くまで散歩をした。うどんを食べて(東京のうどんは少し高い)、公園でお花見をして(枝垂れ桜が良い)、さくらんぼソフトを日向で食べて(ホムカミ)馬喰横山にある古道具屋で金色の八角鏡を買った。森羅万象、どうやら玄関に置くと金運爆上がりのようだ。どんと来い超常現象。新婚旅行は星野リゾートの予定である。全然無駄遣いをしていない、そもそもATMに行っていないのだ。見えない力で既に財布を握られている。